こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
本日は、嫡出でない子の相続は、嫡出子とどう違うのか。相続問題において、どういう問題に発展する可能性があるのかについて解説していきます。
法律上の「子」には、嫡出子と嫡出でない子(講学上「非嫡出子」と呼ばれることが多いので、以下この用語を使用します。「婚外子」ともいわれます。)の2種類があります。
我が国においては、現状としては嫡出子の方が多数派となっていますが、近時の家族の在り方の多様性も反映してか、近年は、非嫡出子の数も増加傾向にあると言われています。
そこで、非嫡出子とはどのような子なのか、父母とはどのような法律関係があるのか等、基礎的な解説をいたします。
非嫡出子(婚外子)とは
非嫡出子(「婚外子」ともいいます。)とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子のことをいいます。
これに対し、嫡出子とは、婚姻関係にある男女間に生まれた子のことをいいます。
ここにいう「婚姻関係」とは、いわゆる「法律婚」のことであり、事実婚である内縁関係は含まれません。
嫡出子と非嫡出子は、生物学上の「子」であることはそのとおりなのですが、法律上の親子関係の観点からは、両者の間には、若干の法律上の取扱いの違いがあります。
非嫡出子が父親と法律上の親子となるには認知が必要
非嫡出子は、嫡出子と同じく、実の母親の分娩により生まれてきます。
非嫡出子と母親との間に親子関係があることは分娩の事実により明らかなので、法律上の母子関係は当然に発生すると解されています(最判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁)。
これに対し、非嫡出子は、母親が婚姻中に懐胎した子ではないので、父親との間の親子関係が推定されません(民法772条1項)。
よって、非嫡出子と父親との間には、法律上の父子関係がないことが原則となります。
非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係を発生させるには、「認知」という手続が必要となります(民法779条)。
父親が非嫡出子を認知しますと、出生の時にさかのぼって、両者は法律上の父子関係が発生します(民法784条)。
非嫡出子の相続権及び法定相続分
民法887条1項によりますと、被相続人の子は相続人になると規定されています。
ここにいう「被相続人の子」は、被相続人と法律上の親子関係を有する者をいいますので、嫡出子か非嫡出子かは関係ありません。
すなわち、非嫡出子であっても、被相続人との間に法律上の親子関係があるのですから、相続権を有することとなります。
非嫡出子の相続権及び相続分については、つぎにように考えます。
①母親の相続
非嫡出子は、分娩によって、母親との間に法律上の親子関係が発生します。
よって、母親が亡くなり被相続人となった場合には、欠格事由、廃除、相続放棄等の場合を除き、非嫡出子は相続人となります。
②父親の相続
他方、非嫡出子と父親との間には、当然には法律上の親子関係が発生しません。
非嫡出子に父親の相続権を与えるためには、父親が非嫡出子を認知し、法律上の親子関係を発生させる必要があります。
認知は、戸籍法の規定にしたがって届出をする方法のほか(民法781条1項)、遺言において認知する旨を記載する方法もあります(民法781条2項)。
③法定相続分
非嫡出子が相続人となる場合、法定相続分は嫡出子と同じです。
この点に関し、以前は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定があったのですが(民法旧900条4号ただし書)、平成25年の最高裁大法廷決定により、その旧規定は憲法14条反し違憲であるとされました(最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)。
それを受けて民法旧900条4号ただし書前段は削除され、現在では非嫡出子の相続分は嫡出子と同等となっています。
非嫡出子がいる場合に考えられる相続トラブル
非嫡出子がいる場合に考えられる相続トラブルとしては、つぎのようなことが想定されます。
非嫡出子は、嫡出子と共同生活をしていた時期がないことが多いことから、普段のコミュニケーションがとれていないことがあり得ます。
また、遺言による認知も認められていますので、そもそも嫡出子側で非嫡出子の存在自体を認識していないこともあり得ます。
あり得るケースとしては、非嫡出子を遺産分割協議に参加させないで協議をまとめてしまうことも考えられます。このようなケースでは、後々トラブルに発展してしまいますので、十分に調査する必要があります。